母親への気遣いにあふれる建物
2019年1月26日
母親への気遣いにあふれる建物
兼六園の一角に位置する
国指定重要文化財「成巽閣」は
藩政期における前田家の生活空間
を今に伝える唯一の建築物です。
その建物は格調高く優美なだけでなく、
母親思いの親孝行の心情が読み取れます。
名門公家出身の真龍院
成巽閣は13代藩主前田斉泰が義母の
真龍院(12代藩主斉広継室)の隠居所
として建てられたものです。
真龍院は名門の公家鷹司家から迎えられた
教養に富む女性で、幼くして藩主となった
斉泰も、真龍院から多くをまなびました。
真龍院は1838年に江戸から金沢に下り、
城内二ノ丸に住まいしました。
そして1863年に斉泰の正室溶姫が金沢に
住むことなったため、斉泰が母のために
新しく屋敷を造営したものです。
亡き夫の面影を残す
その「謁見の間」や隣接する「鮎の廊下」
は真龍院の夫斉広が隠居所として使った
竹沢御殿のものを用い、亡夫の面影を
残しました。
成巽閣 「鮎の廊下」
「群青書見の間」はヨーロッパから
取り寄せた非常に高価なウルトラ
マリンブルーを惜しげなく用い、
天井が鮮やかな群青に塗られて
います。
成巽閣 「群青書見の間」
約20メートルの長い縁側「つくしの緑」
は庭園を見渡せるよう柱が1本もなく、
小鳥を愛でるため水音もけされてい
ます。
成巽閣 「つくしの緑」
「松の間」では色鮮やかな小鳥を描いた
オランダ渡来のガラス絵を障子に取り
入れました。
成巽閣 「松の間」
ほかにも野辺の草花を
描いた障子、ウグイス張りの廊下、
曲水の清音が響く庭園など、母親への
細やかな気遣いに溢れています。